Shingetsu-Kagura Project vol.03.2023-12.13.
実は、2005年に10ヶ月ほどメキシコシティに住んでいたことがありまし た。現地でライブをした時、たまたま聴きに来てくれた女性ピアニストから 声をかけられたのがきっかけとなった演奏です。 メキシコでは無声映画を生演奏で上映する文化があり、そのピアニスト Deborah Silberer も、無声映画を自身のピアノ演奏で上映しているとのこと でした。 そんな彼女が、ライブの終演後に、「是非、自分と一緒に無声映画の音楽を 作ろう!!!」と誘ってくれたのでした。 彼女の中では、ライブを聴いたから、セルゲイ・M・エイゼンシュテイン監 督の「戦艦ポチョムキン」の音を僕と一緒に作りたいと決めていたらしいで す。
後日、彼女の家に行って、片言のスペイン語と英語で、映画の雰囲氣の説明 を受けたり、音の構成などを相談したりして、作品としてのクオリティを上 げていきました。その後、メキシコシティの芸術大学で「戦艦ポチョムキ ン」を生演奏で上映しました。 その時の上映が好評で、翌年2006年の11月に再度メキシコに呼んでいただ いて上映した時の音源です。
この時は、ピアニストのDeborah Silbererに加えて、ヴァイオリンの Vladimir Bendicenも参加してトリオの演奏となりました。3度の上映の機 会を得て、2度の上映で経験した効果的な音を更に磨いての、この音源のラ ストセッションは、音の世界観が更に重層的なものになり作品が本当に生き 生きとしたものになったと感じました。 ピアノが奏でるテーマと、ヴァイオリンの情緒的な音色がとても効果的で、7 0分ほどの作品になりますが、ついつい聴いてしまう印象です。
個人的に試してみたのですが、以下のアドレスyoutubeにアップされている 「戦艦ポチョムキン」の音をカットして、こちらの音源を流してみるとなか なかの臨場感でした。 音だけでも楽しめますが、映像と合わせるとより一層興味深いものになって います。