「奉納」という言葉は、日本人の持つ大切な感覚でもある「おおらかさ」に繋がっていると感じる。
神楽や伝統芸能でもそうだが、ハレの祭りの日に奉納されているはずで、昔は特にそういった芸能に関わる人間には、伝承の継承として先人からの素敵な感覚である神人一体的な感覚が備わっていたとも感じる。
自分が神楽師をしている賀茂神社の太々神楽でも、今は亡き師匠連中から現在ひとりとなってしまった師匠にもその感覚が備わっている。
賀茂神社で言えば、「神楽師は本当にどうしょうもない窮地に陥った時、一度だけは賀茂神社の神様が助けてくれる!!!」と言われている。
前日は、恒例となっている餅つきだったのだが、最後の玄米餅をつく頃には暗くなってしまうという状況になり、何故か最初の捏ねる作業の時に子どもたちが杵で捏ねる若手神楽師を先頭に臼を中心に回り始めるという珍しい光景に遭遇したのだ。
まるで一つの太鼓を数人で回りながら叩く、古の儀式の様でもあり、人間の持つ遺伝子に刻みこまれた記憶がそうさせているのかもしれないと感じた瞬間でもあった。

そんな餅つきの翌日12月29日は、2025年の叩き納めとなった。いわゆる伝承や伝統とは似て非なる「奉納」の現場に立つことになったのだ。

渋川八幡宮と伊香保神社で行われる「年越しの大祓式」での神楽太鼓の奉納。
年の最後に、知らず知らずのうちに溜まったツミ・ケガレを祓うという大祓。奉納演奏としてはかなりのエネルギーも必要でもあり、自分では神楽太鼓の響きはピッタリだと感じるが、渋川八幡宮の宮司さんをはじめ関係者の方々が、大祓式に神楽太鼓の響きを必要としてくれたことが、とてもありがたいことだと思うのである。

渋川八幡宮には、茅の輪まで設置されていて、年末の冷え切った空氣がより一層大祓式の雰囲氣を加速させていた。

神楽殿の神前には、巨大な白達磨が鎮座していて、凄まじい存在感を放っていた。この白い達磨は、渋川八幡用に作られているとのことで、ここまで大きなものは今後は作れないということだ。

今回も感じたが、この神楽殿の響きはとても心地良い!!!
境内の木々のざわめきや風の音が、響きをより豊かにしている印象。

そろそろ奉納演奏が終わりに近づいたと感じた瞬間、ひんやりとしているが暖かい様な不思議な風というかゆったりとした空氣の流れが来たのだ!!!
これは、即興演奏の醍醐味でもある何かしらの知らせでもある。
今回は、時間が決まっているので、5分前に助っ人で来てくれた小林さんに鈴を鳴らしてもらうことになっていたのだが、ちょうど鈴の鳴ったタイミングとリンクていたのもかなり興味深い出来事でもありました。
ラスト部分の2分ほどの動画が下記リンクで見る事ができます。

神様も含めみんなで奉納演奏を見て楽しんでくれている様に見える、この素敵な一枚が渋川八幡宮での奉納演奏の様子を物語っております。
そして、午後は伊香保神社へ!!!

伊香保神社は、渋川八幡宮から一氣に登って、標高700メートルという位置にある。ということで、比べ物にならないほど寒いらしく、関係者からは「伊香保神社は、頬が痛いっすよ!!!」と脅かされつつグングン登って行った。
ありがたいことに、神楽殿の床には絨毯を敷いてくれてあり、もの凄くありがたかった。
今回の大祓式での奉納演奏で思ったのは、寒い中でも演奏できる衣装をどうすればいいか!?ということだ!!!
俺の神楽太鼓の演奏スタイルは、演奏し始めてもほぼ動かないのでほとんど自分での発熱行為は期待できないということなのだ。

うさとの黒の衣装を選んだのだが、3枚重ねるこの衣装でも寒く、結局着て行った服の上に着込むことで寒さを乗り切ることができた。

神楽殿は、左手に山の斜面があり右側は伊香保の温泉街を見下ろす形だった。左手の山の傾斜当たった音は神楽殿の間の山の斜面を回り込んで神楽殿の上に広がり、右左の打音が太鼓の中心に凝縮しつつ多くの音を、右側へ抜けていく感覚だったが、低音を中心にした響きの時には、神楽殿の床がグラグラと揺れ出した感覚があった。
これは、実際に揺れていたということなのかは置いといて、太鼓の倍音と振動が絶妙なバランスで作用した時にこうなるので、確実に良いことでもあり、延喜式内社の三之宮となる伊香保神社に神楽太鼓が鳴り響いたのは、個人的にもとても意味のあることだと感じた時間でもありました。

伊香保の温泉街に鳴り響く神楽太鼓の音。約30分というかなり長めの奉納演奏の響きは、15分では鳴らない響きも生まれて、自分としても今後の神楽太鼓の演奏の時に確実に生きてくると実感できた奉納のひと時となりました。

神社の在り方も、その土地その土地それぞれだと思いますが、渋川八幡宮も伊香保神社もそこに関わる方々の心意氣がひとつの形となって、素晴らしい年越しの大祓式になったと感じる2025年の年の瀬となりました。

渋川八幡宮、伊香保神社の関係者の皆さまをはじめ、関わっていただいた皆さんに心より感謝いたします。
皆さま、良いお年をお迎えください。