5月19日は、今回のライブの題名「風の鼓動」の如く、桐生はもの凄い風が吹き回っていた。
会場の酒蔵の隣には、巨大な楠が鎮座していて、その大木が強風に揺られ、小さな枝が沢山折れて落ちているほどだった。
そんな強風の中で、リハーサルは行われた。
朗読の大川さんは、驚いた事に、「風の鼓動」の全文を頭に入れて、この日にのぞんでくれていた!!!
リハーサルでは、お互いの手の内の全部は出さずに、楽しめる部分を本番に残すカタチとなり、良い感触を持ちつつ本番が始まっていった。
今回、朗読部分では、韓国の太鼓プクッ、シンギングボウルやタイのゴング、メキシコの古い打楽器テポナストレ、亀の甲羅、ベル類など、好きな楽器を用意した。
冒頭部分は、プクッの太鼓の打音と振動で始まった。その最中に大川さんは、舞台にスーッと、そして勢い良く舞い出て来た様に見えた。
大川浩正さんの口から発せられる、言霊が酒蔵に響いていく。。。
「風の鼓動 石坂亥士のパーカッション」
アジアの広大な大陸を吹き渡る風は、
日本という小さな島にも押し寄せ、
とがった峰々や、切り刻まれたような、
狭隘な谷のすみずみを、小さな風の渦となって吹き廻り、
再び大河のように合体して、アジア大陸へと帰ってゆく。
その渦のように吹き廻る風は、一瞬、石坂亥士の体内にとどまり、
体温を吸って音に結晶する。
石坂亥士のパーカッションは、私達の血肉に織りこまれた、
はるかな民族の記憶に響鳴する。
この小さな島で、幾千年かをすごしてきた日本人達が、
記憶の底にたたみこんできた、まるで自分自身の鼓動のような音律。
遠くアルタイ山脈に発し、中国大陸を旅したのち、
朝鮮半島を経て、この島に到った人々。
それからまた、ユーラシア大陸の奥深く生まれ、
ヨーロッパの陸地のすみずみを満たし、
さらなる西を目ざして漕ぎ出した人々。
アフリカ大陸の熱い大地に、多くの命を落とし、また育んだ人々。
太平洋の島々から手製の舟で別の大陸と往き来した人々。
その別の大陸にも、アジアから長大な旅に耐えた人々がいた。
万年におよぶ、長い道程で、私達の魂は、どれだけ多くの民族、
多くの村々と肌を触れ合ったことだろう。
彼らを襲った苛酷な出来事や、また祝祭の喜びを、
どれだけ多く記憶したことだろう。
石坂亥士の音律は、それらの記憶すべてを抱擁し、今、新しい光景をつむぎだす。
それは、アジアの顔を持ちながら、魂はこの全地上に千遍である風の鼓動だ。
風は、彼の脳髄から延髄から魂から筋肉を、
ひとつの結晶に結び、私達にささやきかける。
「生きよう、喜びを分かち合おう、」と。
詩:荒地かおる
荒地かおるさんの詩は、とても大きなスケールのもので、ようやく表に出すことができたのではあるが、自分の音の世界だけのことではなく、音の本来の在り方を説いてくれている氣がしている。
ひとつの音というものが、どれだけ多くのことをイメージでき、身体の内にも外にも環境にも影響をおよぼしていくのか・・・・。
これからも、そんな音の神秘を追求しつつ、この音の世界に身を置いていきたいと思った演奏となりました。
写真:須藤亜弥子 書:鳥井美知子
鳥井美知子さんが冒頭部分と結びの部分を書いてくれて、舞台に言霊が鎮座して場を引き締めてくれていた。
「生きよう 喜びを分かち合おう、」と・・・。詩の言霊から音霊へと移り変わっていく瞬間、ある種時空がよじれる様な明るい未来的な不思議な感覚を覚えた。
この楠の大木が今回の言霊と音霊もその樹の中に記憶してくれているのかもしれない。
大川さんをはじめ、少数精鋭のスタッフ陣に支えられ、風の鼓動を無事に終えることができました。ご来場いただいたみなさん、どうもありがとうございました。
来月は、ディジュリドゥのKNOBさんを迎えての、6月30日夏越の大祓です!