秋季例大祭も終わり、例年だと神楽の練習は、大仕事の後ということもあり、ゆるやかになっていく。
しかし、今年は違っているのである。会長の荻野さんから、「それぞれの舞の役を、二人ずつはできる様にしていこう!」という号令がかかったのだ。
そして、昨夜は、「大蛇退治の舞」で俺が舞っているスサノオ役を、新人の清水君に教えることになった。
まずは、幕から出てすぐに、挨拶がてら見得を切るわけだ。
これは、歌舞伎の見得からきているんだろうが、賀茂神社の神楽のフィルターを通した舞振りへと変換されているようだ。
見得を切る時の重要なポイントが、重心の移動になるのだが、これは、なかなかに難しい。
そんなひとつひとつの所作や舞振りを年月をかけて自分のものにしていくのが、神楽でもあると思う。
そんな舞の練習もあり、囃子の練習も一気に駆け抜ける感じに行われた。
俺は、この大胴を練習させてもらった。
太鼓というと、ついつい力で叩いてしまいがちなのだが、それでは出せない音がある。
それは、俺が神楽師になった当時は、健在だった天才的に太鼓が上手かった師匠の音だ。
その音の記憶は、今でも自分の心の記憶として、鮮明に残っているのだ。
実は、昨夜の練習の時に、そんな師匠が出していた感じの音を自分も出す事ができたのだ!!!
これは、個人的には、本当に凄いことで、狂喜乱舞する勢いなのである。
あの音に、自分が少しでも近づいてきたのが、本当に嬉しくて仕方ない!!!
そして、その音を後輩たちへ繋いでいけたら、この上なく幸せな事だと思う。
音の世界は、深いなぁぁぁ。としみじみ思うのである。
そして今日は、サントリーホールでの公演のリハーサルなのである。
昨夜の、ありがたい体験を真似に秘めて、いざ都内へ!!!
しかし、結構な大荷物となってしまった。
電車に乗って、入り口付近に神楽太鼓とスーツケースを置いていたら、おじいさんが声をかけてくれた。
「こっちは、端っこが空いてるから、こっちへ置きなよ!」
そして、最後に何故か「OK!?」と。。。
ありがたく、そちらの端っこに荷物を移動する。
どうやら、外国人に間違われていた様な感じで、おじいさんは、次の駅で会釈をしてニコニコして降りていったのだった。
なんだか、嬉しい出来事に、心がほっこりした出来事だったなぁ。