Dragontone /石坂亥士

神楽太鼓奏者・石坂亥士のブログ

妙義神社の懐の深さ

例年であれば、4月15日は、地元桐生の賀茂神社の神楽殿で神楽を舞っているのだが、今年は、それが中止となった。

23歳から神楽師を始めて、まさかこんなことがあるのか!?と言うほどの大事件なのである。なので、今年に至までの26年間、4月15日が空いたことは無かったのだ。

この日本全国で春祭りが開催されるという、超絶スペシャルなハレの日に、自由に時間を使うことができるのは、ある意味神計らいなのかもしれないと思ってしまったのも事実だ。

そこで、7都府県への緊急事態宣言なるものが出る前々から、妙義神社での奉納演奏と撮影をさせてもらう話が進んでいた。

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それならば是非とも4月15日にやらせていただけるようにと、お願いしたのである。

そして、妙義神社でもその日は、春祭りの御神事があるということだったので、その御神事の後に奉納演奏をさせてもらえる運びとなったのだった。

しかし、いざ当日を迎える前に、前述の宣言が出てしまったので、もしかしたら難しいかもしれないと思ったのだが、宮司さんからは、「奉納演奏をお願いします!」という嬉しい言葉をいただいたのだった!

写真:須藤亜弥子

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初めて妙義神社に参拝した時には、台風の被害で石段の上にある拝殿には行けなかった。数年後に修復が完成して、いざお参りしてみて、その空気の清浄さと厳格な空気感には本当に驚かされたのを、今でも思い出す。

そして、この金の龍に一目惚れしてしまい、勝手に縁を感じていたのだった。

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実は、一度だけ非公式に、ベル類を持って行って、拝殿の向かって右横の巨大な磐座の所で音を鳴らした事があった。

その時に感じたのは、「これほど美しく繊細に音が響いていく空間は他には無い!」ということだった。そして、相当な覚悟を持ってのぞまなければ、危険な場所でもあるなと思ったのだ。

そんな妙義神社で、御神事の後に奉納演奏させてもらえるという奇跡の様な機会をいただけたのである。仲間でもあるカメラマンの須藤亜弥子さんが、妙義神社方面に住んでいるご友人に相談して、神社へ話を通してもらい、妙義神社宮司さんに繋いでくれたという流れで実現したのである。

妙義神社宮司さんをはじめ、須藤亜弥子さん、ご友人の方、妙義神社の関係者の皆さんに、心より感謝いたします。

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やはり、一度、事前に打ち合わせに行っていたので、いろいろなことがスムーズに流れていく。

控え所となる入り口には、飾られた花の前に、石坂様と書かれた立て札が出迎えてくれ、とにかく、全てが気持ち良く進んでいく。

この黒漆と金箔の装飾の中での演奏をしようと思った時、うさと座のヨーロッパツアーで着ていた衣装が思い浮かんだ。

伝統的な衣装ではなく、さとううさぶろうさんが今の時代に生み出したカタチが、神楽太鼓という伝統的な太鼓を使ってはいるが、演奏方法は即興であり新しいカタチという自分の演奏スタイルにしっくりくる氣がする。

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波己曽社殿での奉納演奏は、音が黒漆の塗られた面に乱反射して、とにかく凄い疾走感だった。音の密度としては、一気に沸点に到達した感じもある。

リズムを生み出すだけではなく、空間に響く反射する音もある程度コントロールして、倍音を増幅させる奏法なので、この波己曽社殿での奉納演奏は、乗ったことはないがエネルギーが超高速回転している宇宙船に乗っている様な感覚でもあった。

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波己曽社殿での奉納演奏を終えて、次は、三本の巨大な杉の真ん中から拝殿へ向けて石笛とグンタ。

境内に響き渡る音が、本当に気持ちよい。前日は、もの凄い強風だったのだが、当日は本当に穏やかな祭り日和だった。風が、ただでさえ清浄な場所を、春祭りのためによりいっそう清浄な場所へしてくれたんだろう。

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三本の杉の真ん中には、石が埋め込まれてあり、そこに立つと拝殿から流れて来るエネルギーが身体を通過していくようでもあり、計算しつくされた遥拝所となっている。

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この石段がまた素敵で、脇に立っていた巨木の根が成長して石段を押し上げつつも、絶妙なバランスで崩れないでいる。

ちょうど法螺貝の音が聴こえたりしていたが、妙義山は、修験の山でもあり、その険しさが、この石段にも現れているのかもしれない。

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拝殿の装飾は、とにかく隙がない。全てが極まっていて、それらがまた調和しているのが、本当に気持ち良い。

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宮司さんに説明していただいたのだが、奥の神殿の彫り物は名人級の職人が担当しているらしく、本当に素晴らしいが、こちら拝殿の彫り物は、それに比べると、彫りが少し甘いので、弟子の職人の作なのでは!?とのことだった。

しかし、どちらも共に素晴らしいことに間違いない!!!
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まさか、この場所で神楽太鼓の奉納演奏ができるとは!!!

感慨深い・・・。近年で一番嬉しいことだ。

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この妙義神社の金龍と共に神楽太鼓を奏でる。妙にしっくりくることに自分でも驚いたが、きっと神計らい的な絶妙なタイミングなんだと思うのだ。

拝殿に響く音は、開放的でとにかく気持ち良く鳴っていた。15分ほどの演奏だったが、仲間からはもっと長くてもよかったと言われるほどに、この場所に神楽太鼓の響きは合っていた様で、嬉しい限り。

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シンギングボウルとソルフェジオガンクのセットで、宇宙の音の世界観を感じつつ、正面の石畳で。

この空間、とにかく金属楽器は本当に気持ち良く響く反面、繊細なコントロールも必要になるので、やはり神域の音の世界なんだと実感する。

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以前から気になっていたこの場所は、妙義神社の大元とのことで、建物ができる前は、この磐座を信仰していたとのこと。この前で、どうしてもやりたかったのだ!!!!

大銅鑼の奉納演奏で、今回の妙義神社での一連の奉納は無事に終了。

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この唐門から下へ戻るのだが、ここはまさに境目だということだ。この門から中は超絶厳格な御神域なのだと、ひしひしと感じながらこの門をくぐる。
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神楽太鼓を担いで石段を下る。今までに無い、濃密な空間での奉納演奏となった様で、身体から「今日は、凄い場所だったなぁ!」と言われている感覚があったなあ。
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宮司さんのご子息には、軽トラで大銅鑼やもろもろの楽器を行き帰り運んでいただいた。こんなスペシャルなサポートもしていただき、妙義神社の関係者のみなさまには、あらためて、心より感謝したします。

www.myougi.jp

 

やはり、個人的には、群馬最強神社であることを再確認して、妙義神社を後にしたのでありました。