Dragontone /石坂亥士

神楽太鼓奏者・石坂亥士のブログ

立春大吉2023 ソロライブを終えて

立春大吉のお札は、立春の日の朝書くというのがポイントらしいので、その通りに朝から書きはじめている。

来てくれた皆さんにお渡しする事にしているのだが、連れてきてくれた子どもたちにも渡したいという想いがあるので、100枚程度は書くことにしているのだ。

時間は、演奏しているよりもかかるのだが、ここ数年は、和紙も自分で漉いてその紙に書いていることもあると思うが、以前よりも早く良い感じに書けているのが不思議ではある。

和紙なので、同じものは一枚もなくて、それぞれの紙の個性に合わせて、字体も多少違ってくるのが、自分としても面白いところだ。

そんな朝からのお札と過ごす時間を経て、いざ、会場へ出発した次第。

行ってみたら、大学時代の友人の大が手伝っていて、これまたビックリ!!!

新潟からわざわざ駆けつけてくれて、ありがたい限りだ。

そして、今回は、高校時代からの親友の信の息子のハルがスタッフとして参加してくれているというのも、とても嬉しいことだった。

以下の写真からは、石原ミチさんが撮ってくれたもので、彼女は、撮影する時には毎回セッションしているつもりでシャッターを切っているという。

その写真からは、音や空氣が伝わってくる感じさえしているので、多めアップしておきたい。

祭壇には、お札と共に、三輪福さんが送ってくれた、昨年の奥能登での火熾し神事にて奉納演奏をした火で焼いたという炭とゆべし、そして、小林さんが子どもの頃に食べたみかんの種を庭に飛ばした種から成長したというみかんを供えさせてもらった。

物にも魂が宿るというが、中央の花瓶は、たまたま信のおばあちゃんの花瓶だった。今回は、信の家族からのサポートが大きかったのかもしれない。

祭壇の前には、銅鑼を逆向きに置いて、そこに上から水が滴る様にしてもらった。自分の意思とは関係なく落ち続ける水というものが、もう一人の共演者になったと思っているのだ。

スタッフのみんなには、水が落ちる仕組みを作って欲しい!と伝えただけだったが、音響の金子さんは、銅鑼の下にマイクを仕込んで、生の音に少し音を足してどこかにスピーカーを設定して出していたという素敵な計らいだった。

おかげで、水滴の音とのコラボは、個人的にもとても意味あるものとなった。

毎年自分の流れは、立春大吉のライブから始まっていくのだが、今年は、何かが自分の中で解禁になったと思えてならないのだ。

自分自身のライブでは、禁じ手としていた、サムルノリの時に使うサンモを被って登場してみたのである。実は、このサンモという帽子に付いているリボンを自由に操りながら演奏するスタイルの、サムルノリのプロチームに所属しているのである。

このサムルノリは、かなりの超絶技巧であり、俺はギリギリ着いて行っている程度なので、自信を持って、人前で一人でこれをやるというのはあり得ないと思っていたのだったが、何故か立春の当日になって、やってみるか!!!となってしまったのだ。

準備の時にサンモを見て、新潟から来てくれた大が、「サムルノリのCDを持ってるんだよ!」と言っていたのもリンクしているのなあと思えてしまった。

サンモで、祭壇を寿ぐ様に回る。

意図して楽器は選ばないが、今年は、この竹が閃いた。

乾燥し切った太い竹は、硬質な音の中にもやわらかい優しさもあり、残響の長い煉瓦蔵に心地よく響いていく。

本番は、もう一人の自分が奥の煉瓦の壁に映し出されていた様で、照明効果は絶大だなあ。。。

あまり動きのない俺のスタイルを理解して、視覚的にもかなりのサポートをしてくれていることに感謝である。

音響の金子さんは、この銅鑼に当たって響く水滴の音に集中してくれていたとのこと。小さい水滴の音を、俺の音が小さくなった時に合わせてコントロールしてくれていたとのことで、大きな音の時はマイクの音を切っておかないとダメだったらしく、シビアなコントロールだったそうだ。終わるまでそのことは全然知らなかったが、同じ舞台を一緒に創っているんだなあと改めて思ったのだった。

この大銅鑼まわりのセットでの音の世界は、完全に次のステージに突入したというのを教えてくれた音像が出現した。

写真の様に、「グワァァァ〜〜〜ンッ」と時空が歪む様な感覚もありつつも、次のステージの音の扉が開いた感覚もあった。

とにかく、それぞれの楽器が共鳴錯綜し合う音とグルーヴの音世界は、凄まじい物だったことに間違いない。

大銅鑼の裏に置き忘れた水を飲んでみたら、あり得ないほどのまろやかさに、ビックリだった!!!

おそらく物凄いダイナミズムで、細かい音の粒子がその水をシェイクしていたに違いない!

実は、後ろを向いて叩いていたからラッキーだったが、俺の身体の水分もかなり濃密にシェイクされていたのだ。

鼻水がツーッと・・・・・・

そんな大銅鑼のセットで覚醒してしまったからか、ジンべの音の世界も、かなり良い感じに広がっていった。

神楽太鼓はいつもの2尺2寸ではなく、2尺4寸の白馬の皮を張ってある、超強力な音圧の代物を!!!

この神楽太鼓から放射される倍音は凄まじいの一言だ。

おそらく、皮の仕上がりとしては、まだ数年かかりそうなので、積極的にこれから使っていこうと思っているので、今後のこの太鼓の熟成具合に期待していただきたい。

自分にとっては、神楽太鼓は時空を旅する乗り物の様な感覚がある。煉瓦蔵は残響が長いので、俺が感じている音にかなり近い感覚で聴くことができると思うのだが、おそらくこの太鼓を中心とした半径2メート圏内は、超倍音異次元空間となっている。

神楽太鼓の爆音が止む。

灯りが消えゆき、視覚的にも音的にも静寂が。。。

バチの先からは何か、エネルギーが放出されている様な、余韻を感じつつ。

ゴングに落ちる水滴の音が物語を締めくくってくれた様だった。

この大銅鑼セットの一枚に、今回の立春大吉の世界観が凝縮されていると思える。

ご来場いただいた皆さんをはじめ、関係者スタッフの皆さんに、心より感謝いたします。どうもありがとうございました。

また、来年この場所でお会いしましょう!!!

来年の2月4日は日曜なので、昼間の公演となりそうです。

当たり前に表舞台がメインとなるわけだが、表と裏は表裏一体なのだ!!!

照明、音響、会場、それぞれの裏のメンバーの雰囲氣が、俺の動きや音に乗ってくるのである。今回の立春大吉ソロライブでは、特にそれを感じた。

やはり、一番大切なのは、氣持ちの良いメンバーが関わってくれることだと思っており、そんなメンバーに支えられてこの立春から始められたことに心から感謝したい。