Dragontone /石坂亥士

神楽太鼓奏者・石坂亥士のブログ

Shingetsu-Kagura Project vol.09. 空海曼荼羅 ~密教の辿った道~

Shingetsu-Kagura Project vol.09 2024.06.06.

今年に入って強く感じるのは、全ての方がそうだと思うのですが、各人がそ れぞれの大きな流れに身を置いているんだなあ、ということです。 自分の場合は、根源的な音の追求という大きなテーマがあり、音に関わるこ とでその大きな畝りの中にもみくちゃにされながらも、目指す方向へ進んで 行っている手応えを、感じています。

今回の音源は、直接的ではありませんが空海に関わる音源となっています。 2021年あたりから、香川県へ行く機会が増えました。それというのは、師匠 の土取利行さんが生まれ故郷の香川県でサヌカイトの演奏をする流れとなっ たからだったのでしたが、せっかく行くなら、という事で地元の方が子ども たちへの民族楽器のワークショップを企画してくれて、少しずつ自分自身も土 取さんの故郷に馴染んでいきました。 そんな中で、2022年には、空海の母の里フェステイバルが多度津町で開催さ れ、そこで空海の母に縁のある場所での奉納演奏を企画していただき、海岸 寺太子堂と熊手八幡宮で神楽太鼓の奉納演奏をして来ました。 その時の熊手八幡宮での奉納演奏は、土取さんとのDUO奉納となり、物凄く 貴重な音源となっています。

Shingetsu-Kagura Project vol.01の、3曲目に収録されています。

今年2024年の5月19日に、再び、空海の母の里フェスティバルに呼ばれま して、海岸寺太子堂(空海を産むために建てられたという)での奉納演奏と、 仏母院、熊手八幡宮、そしてイベントのクロージングでは海岸寺本堂での神 楽太鼓の奉納演奏と真言宗の僧侶とのセッションまでやって来ました。

イベントの前日に、広島県府中市常福寺の御住職であり盟友でもある殿元 健照さんと連絡を取り合っていて教えてもらったことが、自分にとってとて も重要な示唆となりました。

それは、密教はインドから二つのルートで中国へ渡っているという事でし た。一つはシルクロード経由、もう一つはインドネシア経由という驚愕の事 実でした。 自分自身が、インドネシアのバリ島に縁があり何度となく行っていて、それ も現地の儀式でガムラン隊と一緒に奉納演奏までやらせてもらっている現実 があり、これがまたとてもしっくりくるものだと感じていました。

密教の伝わったルートを殿さんから教えてもらったことで、何故に自分がバ リの儀式や芸能の在り方に惹かれ、そして現地の法具であるグンタという鐘 を使っているのかという事が、音が聴こえる様に腑に落ちた瞬間でもありま した。おそらく自分の持っている縁や諸々の感覚と目指している音の在り方 が、密教の世界観にも共通するものがかなり多くあるのだと思えてきたので す。

海岸寺太子堂での奉納演奏の直前、殿さんから連絡があり、奉納を始める同 じ時間で祈り合わせをしてくれることになりました。心強いなあ、と思って 準備を進めていたら、なんとなんと!広島にいるはずの殿さんが太子堂に現 れたのです!!! これには驚かされました。そして、太子堂の内陣で奉納の祈りを共にしてく れたという、奇跡の奉納となりました。

一曲目はそんな音源です。グンタと神楽太鼓を鳴らしている冒頭シーンで は、密教がインドネシアに海を渡って行く感覚を覚えました。密教の目に見 えない部分での「音」の記憶が、日本に伝来して自分の身体を介して密教の 影響を受けた神楽の音と融合したような不思議な時空が広がっていまきまし た。目には見えない螺旋の渦がいくつも飛んでいく様なイメージの音の世界 観でした。本堂に居た子どもたちは、ぐるぐる走り回っていたのも、そんな エネルギーを無意識に感じていたのかもしれません。神楽太鼓の音がメイン になっているので、殿さんの声はほとんど聴こえませんが、エネルギーはバ リバリ入っています。

二曲目は、イベントのクロージングでの音源となっています。神楽太鼓ソロ からの般若心経とのセッションでは、法螺貝との白熱の即興セッションがか なり良い感じでした!!!

三曲目は、その後に広島の常福寺へ寄った時に、殿さんと響き合わせをした 時のソルフェジオガンクでのセッションの音源です。

四曲目は、5月25日に富山県利賀村瞑想の郷で開催された、「石坂亥士×殿 元健照 ~虚空の響き~」の翌日の朝行われた奉納の音源です。殿さんの声明 の響きの中で自分が石笛を3回吹き終えた後、空間が確実に変化しました。そ れは、本当に不思議なのですが音の響きが今まで聴いたことの無い響きに感 じられました。それは、大きな掌に包まれた様な感じでもありました。

その後、あり得ない速度感に加速し続ける神楽太鼓の響きは、異次元にも感 じられました。 瞑想の郷という所は、ネパールから僧侶を呼んで数ヶ月滞在して描いてもら ったという巨大曼荼羅が鎮座するスペースの中で演奏できるのです。その効 果も勿論大きいと思いますが、神楽太鼓の背後で鳴っている金属の音は特殊 な周波数の音叉なんです。6月22日の夏越ノ大祓2024にゲストで出演しても らう盟友が、利賀村瞑想の郷まで来てくれて、急遽即興セッションへ発展し ていき、響きが止んでも、しばらく誰も言葉を発することはなく、静寂の中 で蛙の鳴き声をしばらくみんなで聴いていました。

五曲目は、その後、奥能登を経由して富山県の朝日町の海岸で能登半島へ向 けて、ソルフェジオガンクの響きを届けました。今回の一連の奉納旅行の流 れが、この響きで結ばれたと思います。

今回の一連の流れは、空海さんの手の平の上で、上手に転がされた様な嬉し い感覚を覚えました。そんな音の旅を一枚の音源にまとめてみました。個人 的には、かなり重要でもあり転機になる演奏となった音源を、こうしてすぐ に共有できるのは、本当に嬉しいことです。Shingetu-Kagura Project に参 加していただいている皆さんに心より感謝いたします。

 

空海曼荼羅 ~密教の辿った道~ 石坂亥士・殿元健照・真言宗僧侶・Take-K

01.海岸寺太子堂内陣奉納 0519 02.海岸寺本堂クロージング 0519 03.常福寺本堂・殿元健照×ソルフェジオガンク 0522 04.瞑想の郷四面曼荼羅の間・神楽太鼓瞑想 0526 05.朝日町海岸・ソルフェジオガンク 0527